東京のある代理店が倒産した。東京営業所長は、直ちに再建策をつくって奔走したが、それまで懸命に手伝いをしてきた会社の倒産であっただけに、裏切られたような気がして、代理店の社長を厳しく批判した。そのとき、そばにいた幸之助がこう言った。

 「きみ、きみは営業所長やで。営業所長というのは、代理店さんの番頭なんや。ご主人が失敗せんようにガッチリ守っていくのが番頭やないか。きみはご主人が失敗したというて怒っているが、私に言わせればきみの失敗や。きみが番頭として、しっかり見ておれば、こんなことにはなっていなかったんやないか」