何のための仕事かね――仕事を見る眼〈1〉
仕事

何のための仕事かね――仕事を見る眼〈1〉

 昭和十三年ごろのことである。  毎日のように工場と事務所を巡回していた幸之助が、ある青年社員に声をかけた。    「きみ、その仕事は何をやっているのかね」

紀ノ川駅の別れ――人生断章〈1〉
人生

紀ノ川駅の別れ――人生断章〈1〉

 幸之助が社会に第一歩を踏み出したのは、尋常小学校四年の秋のことである。  生家は村でも上位に入る小地主で、かなりの資産家であったが、幸之助が四歳のとき、父親が米相場で失敗、